亀田興毅が王座獲得

良い試合だったと思う。真っ向から打ちに行く若い亀田に対して、経験豊富なランダエタは巧みに攻撃を受け流し、高いテクニックで反撃を打ち込む。1Rにいきなり亀田がダウンしたことには驚いたが、やはりその後の闘いを見ても亀田は劣勢だった。世界戦ともなるとやはり今までのようにはいかないのだと実感する。

しかし亀田の精神力は凄かったと思う。初の世界戦でいきなりダウンを取られるという状況。以前から、あのビッグマウスの裏にある冷静さ・したたかな戦略は感じていた。彼の奥底にあるものは、メディアが創り上げた薄っぺらい狂騒の中に取り込まれてなどいないだろうと思う。インタヴューの受け答えなどを見ても、自分の置かれる状況をごく冷静に認識していたのではないか。

そんな彼はやはり、もともと感じていたものに加えてさらに相当のプレッシャーをあのダウンで感じたことだろうと思う。しかしそんな中でも最後まで冷静に・熱く闘い抜いた。自分より年下の男があのような勝負を見せてくれたという点にも感心した。

そして勝負は判定へ。僕はそれでもやはりランダエタの勝利だろうと感じていた。しかし亀田の勝利。「疑惑の判定」と言われても仕方あるまい。既に、メディアの中にも判定の不可解さを指摘する記事が見られる。そして多くのネットにおける発言者は大騒ぎだ。やれ八百長だ、インチキだ。そしてそれは亀田の人格への攻撃にまで至る。


もちろん僕も、あの判定の背後にある様々なしがらみ、汚い思惑は感じる。だが同時に亀田のことを、当事者でありながらそのようなことを感じられないほどの馬鹿者だとは思わない。亀田という一ボクシング選手とそのようなしがらみは切り離して考えたい。

「世間をなめるな」などとのたまい、その実まったく冷静な捉え方をせずに、亀田のパフォーマンス等に対して感じる感情を「正当化」するために判定の不可解さを利用する者もいる。なるほど、「世間様」とはずいぶん賢くていらっしゃる。


僕は「世間」を構成する一人なのだという責任は忘れることなく、しかし「世間」などというものに帰属意識を持ったりその権威に虎の威を借るようなことはせずに、一個人として発言したいと思う。そして、「今日の試合そのもの」に対して思うことは、やはり単純極まりない以下のことだ。


ランダエタ・亀田両選手、良い試合をありがとう。できることなら、再戦が見たい。